ヨガがストレスに有効である根拠

 

  コルチゾール(cortisol)はストレスホルモンとも呼ばれており、過度なストレスを受けると体内での分泌量が増加します。身体全体で発現しており、血液検査によってストレスを数値化することが可能です。

  PubMed(パブメド)は、アメリカ国立医学図書館の国立生物工学情報センター(NCBI)が運営する医学・生物学分野の学術文献検サービスです。
  このデータベースで「ヨガ(yoga)」と「コルチゾール(cortisol)」とのキーワードでAND検索を行い、検索結果を年次別にグラフ化しました。2010年からヨガとコルチゾールの相関関係が多数報告されるようになりました。

  いずれの報告でも、ヨガの練習を行うとコルチゾール量が減少するという結果になっております。ヨガの練習後は気分がすっきりするものですが、医学的にも身体の分子レベルで確認されています。


 ヨガはアンチエイジングに効果的

●イントロ● グルタチオンは我々の体内で機能している抗酸化作用を持つ物質で、20代をピークに加齢とともに減少していきます。還元型のグルタチオンは健康や美容の維持に有用であるとして、肝機能の改善・皮膚の色素沈着改善・パーキンソン病治療等に用いられています。特にアンチエイジング効果に注目した場合、その高い抗酸化作用・メラニン生成抑制作用から「最強の美白点滴」と呼ばれています。

 

Improvement of glutathione and total antioxidant status with yoga.     J Altern Complement Med. 2007 Dec;13(10):1085-90.    Sinha S, Singh SN, Monga YP, Ray US.


 試験対象はインド海軍所属の健康な男性51名(25-35歳)で、無作為にヨガグループ(30人)と 比較対象グループ(21人)に分割されました。
試験期間は6ヵ月間で、朝1時間のプログラムを1週間に5回ずつ行いました。

ヨガグループでは、祈り、アサナ(ヨガのポーズ、40分)、呼吸法(5-10分)、瞑想(5分)を行い、 比較対象グループは、ルーチン的な肉体エクササイズを行いました。

評価方法は血液中の酸化型グルタチオン、還元型グルタチオン、グルタチオン還元酵素活性、 総抗酸化能に関して行われました。 その結果、ヨガグループでは還元型グルタチオン量の増加(1.4倍)と総抗酸化能の増加(1.5倍)という増加が観測されました。

著者はヨガを行う事により人体細胞において抗酸化物質の生産力が増加する可能性があると結論づけられています。


 ヨガは心臓や血管の健康維持に効果的

●イントロ● ホモシステインは、コレステロールなどと並んで動脈硬化を引き起こす物質として注目されています。動脈硬化は、日本人の死因の主な原因である心疾患(狭心症、心筋梗塞など)や脳血管疾患(脳卒中、脳梗塞、脳出血など)を引き起こす恐れがあります。なお、加齢によりホモシステイン濃度は上昇していきます。一方で、先天的にホモシステイン濃度が高い体質の人では20代でも脳卒中等が起こり得る位に心血管が硬化するそうです。

 

 Effect of yoga on serum homocysteine and nitric oxide levels in adolescent women with and without dysmenorrhea .    J Altern Complement Med. 2013 Jan;19(1):20-3.    Chien LW, Chang HC, Liu CF.

 

試験対象は機能性(原発性)月経困難症の女性35名で、 比較対象グループは健康な女性35人です。 

 

試験期間は2ヵ月間で、30分のセッションを1週間に2回ずつ行いました。 内容はアサナ(ヨガのポーズ)がメインで呼吸法も行われました。 試験対象グループも比較対象グループも同じセッションを受けました。 

 

評価方法は血液中のホモシステイン量と一酸化窒素量でした。 

 

その結果、一酸化窒素量には変化が無く、ホモシステイン量は変化がありました。 ホモシステイン量の変化は両グループで起こり、試験対象グループでは51%減少し 比較対象グループは46%減少しました。 

 

著者は女性においてヨガは内皮機能の復元により健康維持する可能性があると結論づけています


 ヨガはひざ関節の痛み・機能改善に効果的

●イントロ● 変形性膝関節症は、日本国内に限っても患者数は約700万人という一般的な疾患です。また、40歳以上の男女の6割が罹患しているというデータもあります。なお、どの年代でも女性の方が男性に比べて1.5-2倍多く、高齢者では男性の4倍といわれています。加齢とともに発症しやすく、中高年の女性に多くみられます。(Wikipediaより抜粋)

 

 Yoga for managing knee osteoarthritis in older women: a pilot randomized controlled trial.    BMC Complementary Alternative Medicine. 2014, 14:160.    Cheung C, Wyman JF, Resnick B, Savik K.

 

変形性膝関節症に対してヨガ(アサナ)が有効であるか試験が行われました。試験参加者は女性高齢者36人で平均年齢は72歳です。膝の状態確認の検査は合計4回行われ、時期としては試験開始前と4週間後、8週間後、20週間後に実施されました。

ヨガ・プログラムはインストラクターによる指導と自宅練習の2種類が行われました。インストラクターによる指導は第8週目までで、週1回60分行われました。自宅練習は第20週目までで、週4回各30分行われました。

その結果、1)痛みに関しては4-8週間後に有意差が確認されました。2)膝の機能改善に関しては4-20週間後に有意差が確認されました。3)睡眠に関しては4-20週間後に有意差が確認されました。また、ヨガ関連の有害事象は観察されませんでした。

 

何故ヨガが有効なのかに関して、論文中に以下の記載があります。
「ヨガの練習をしている時に繰り返される関節の動きが、細胞レベルで生理学的な影響を持つと考えられる。ハタヨガはヨガのポーズ、呼吸法、瞑想が組み合わされており
、これらは変形性膝関節症に関連のある骨格構造を再調整し、関節の周囲の筋肉を強くし、堅い関節を引っ張ることによって痛みや堅さが低減する。」

また、その分子レベルでの根拠として、以下の現象が挙げられています。
「in vitro において生産される炎症誘発性インターロイキン-1 zand腫瘍壊死因子は断続的な低レベルの液圧下において減少する。」

 


これまでは、ヨガは関節炎の管理に勧められるものですが有効性を示す十分な文献がありませんでした。

論文の著者は次のように結論づけています。変形性膝関節症を持つ女性高齢者にとって、今回の頻度(週1回+自宅練習)で行うヨガの練習は実行可能であり、容認でき、安全であり、治療効果も示された。


ヨガは活性酸素減少に効果的

●イントロ● スーパーオキシドディスムターゼ (Superoxide dismutase, SOD) は、細胞内に発生した活性酸素を分解する酵素である。通常、体内で活性酸素が増えても、SODという活性酸素を除去する酵素が私たちの健康を守ってくれています。しかし、この活性酸素とSODのバランスが崩れ、活性酸素が過剰に増えてしまうことにより、さまざまな疾病を引き起こすと考えられています。

 

 Effects of Hatha yoga exercise on plasma malondialdehyde concentration and superoxide dismutase activity in female patients with shoulder pain.    Journal of Physical Therapy Science. 2015, 27(7):2109-12.    Ha MS, Kim DY, Baek YH.

 

 

この試験の目的は、肩の痛みを持つ女性患者(20人、21-25歳)を対象にヨガの効果を調査する事でした。20人の参加者を10人ずつの2グループに分け、1つのグループではヨガを行い他のグループでは何も行わない比較対象グループとしました。ヨガグループでは4ヵ月の間、毎週3回レッスンを受けました。レッスンの内容はアサナ(ヨガのポーズ)を40分、プラーナヤーマ(呼吸法)を2分x2回です。

 

その結果、ヨガを行ったグループでは、1)柔軟性を改善させ2)筋肉の正常な緊張と長さとバランスを改善させ3)関節の機能を改善させた、と報告されました。また、血液検査の結果、ヨガグループではスーパーオキシドディスムターゼが46%増加していました。


ヨガ細胞の若さが維持

 

●イントロ● テロメア(telomere)は遺伝子の先端部分にある繰り返し配列で、細胞分裂のたびに少しずつ短くなるため、細胞老化の指標と考えられています。これまでの疫学研究から、白血球テロメアの長さ(Leukocyte Telomere Length)は加齢や、心血管病・糖尿病患者で短くなることが報告されています。

 

Association of leukocyte telomere length with oxidative stress in yoga practitioners.

Journal of Clinical and Diagnostic Research. 2015 Mar, Vol-9(3): CC01-CC03.

Krishna BH, Keerthi GS, Kumar CK, Reddy NM.

 

この試験では、2年以上ヨガの練習を行っているヨガグループ(30-40歳、15人)とヨガを行っていない健康な比較対象グループ(30-40歳、18人)の血液を採取しその成分を比較しています。

年齢・性別・体重は比較の為に同じ条件の人が選ばれています。

 

白血球テロメアの長さは定量PCR法で調査され、テロメア遺伝子とシングルコピー遺伝子の割合で示されました(T/S ratio (telomere/single copy gene-ratio))。

 

その結果、ヨガグループは1.69±0.03[T/S]、比較対象グループは1.41±0.06、p値<0.001 とヨガグループのテロメアの方が20%長いことが判りました。